製品開発ポイント-ある試作は上手くいったのに
設計を進める中で、試作を作ることがあります。そもそも、なぜ試作を作る必要があるのでしょうか?
1.試作には目的がある
設計を進める中で、試作を作ることがあります。
そもそも、なぜ試作を作る必要があるのでしょうか? この定義を間違えると、首題のように「あれ~ おかしいな~試作は上手くいったのに」となる恐れがあります。
設計作業は、基本的に2次元上で行われます。2次元上とはいわば「紙の上」ということです。実際はCAD上で行われる作業であり、現在は3次元CADというソフトで行うのが主流です。3次元で可視化できるソフトウェア上で設計できるので、紙に書くより具体的な形状をイメージできます。
さらに、ソフト上で強度計算やパーツ同士の組み合わせ確認も行えるようになっており、今ではかなりの領域でCADソフト上で設計作業を完結することができるようになっています。とはいえ、設計通りに実際の出来上がるのか? この確認をしたものです。
これを「設計の妥当性確認」といい、デザインレビュー。頭文字をとってDRと呼びます。
DRを行う一番分かりやすい方法は「一度作ってみよう」であり、これが試作の目的です。したがって、試作は作ることが目的ではなく「作った試作によるDR」が目的となります。逆に言えば、DRの目的に沿わない試作では意味がないのです。
例えば、あるタイヤのような構造を設計したとして、そのタイヤが構造上本当に回転するかどうかを確認したいとなると、構造通りの試作を作れば確認できることとなります。しかし、「タイヤの回転が設計通りにスムースかどうか?」を検証したいのであれば、設計上の材質で設計通りの加工をした部品を試作しないと検証できないのです。また、量産性のDRであれば、量産特性を確認できるような加工でそれなりの数量を製造した部品で検証しないと分かりません。これを量産試作検証といい、PP(プリプロダクション)といいます。
試作とは、検証目的を明確にすることが重要で、必要な仕様で必要な数量製作することと、その試作品をどのような方法でどのような評価をするかの評価仕様も適正に定めることがポイントとなるのです。
試作品を惚れ惚れと眺めるのも気持ちが良いものですが、それよりもしっかりとしたデザインレビューをした設計で、「やっぱり量産品は素晴らしいな~」と良い量産品を惚れ惚れ眺めたいものです。