製品開発ポイント-設計で見落としがちな量産性
3D CADソフトでの設計作業から商品加工までの流れをご紹介します。
1.3D CADではどのような形でも設計できる
3D CADソフトでの設計作業は昔のドラフターによる手書きの設計とは違い、かなり便利になり設計作業の効率化を進めました。昨今では、多機能のバージョンアップにより、さらに効率的に設計作業を進めることが可能となっています。このこと自体は素晴らしいことですし、今後も更なるCADソフトの機能向上を期待しています。
問題なのは使い手である設計者の力量ですが、特に筆者が懸念しているのが「設計における量産性の確保」です。
CADソフト上では、いわば好きなように形状を構築できますが、CAD上では形状が描けても、その通りに加工できるのかが問題です。物理的に「加工」とは、ある作用によってある物の状態(形や外観)を変えることです。当然、物の状態を変える作用にも様々な条件があり、この条件都合こそが「加工性」という加工における特性となります。
例えば、金属を削るという場合、元々のブロック状の金属材料を加工機の刃物による切削により求める形に変化させることで、切削という作用を使い、金属ブロックの形を変えるのです。この切削加工にも条件があります。当然の条件に刃物が金属ブロックに入る場所であることは条件となります。
卵の黄身のように真ん中だけくりぬいた中空構造に削りたいとCADで形状データを作っても、外側を一切削らずに卵の黄身だけ抜いたような中空の空間を削るのは不可能です。これは、あまりにも分かりやすいので設計者もこのうような形状を設計する無茶はしないのであるが、しっかり加工先と確認をしないと見落とす「加工条件」もあります。
何点か例を挙げると、
- 溝形状の角部の形状
刃物で削るため、必ず刃物の曲線ができるので直角の角はでない。 - 削る工程順番
金属切削加工の場合、加工する順番を設定する、薄壁のような形状がある場合は、その部分の片側を最後に削る等の必須の順番が生じる。この順番を無視する形状の加工は工数を要するか、もしくは加工不可となる。 - 材料の固定
材料を固定しないと加工中に動いてしまうので、チャッキングという固定をする。その固定をする設定が困難な形状は加工できないこととなる。
これらは、加工上の都合なので、設計上ではなかなか認識しにくいのですが、金属部品に限らずあらゆる加工において「加工上の都合」があります。
したがって、加工を知ることは良い設計作業の重要な要素となり、「量産性」を確保していない設計品は、加工工数や加工不良が多くなってしまい、製造ロスなどの比率も高くなります。したがって、コストの高いモノつくりとなるので気を付けたい点です。