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製品開発ポイント-マテハンとは

  1. マテハン

物流としての用語でもあるマテハン。マテリアルハンドリングの略でモノの移動です。この記事ではマテハンについて説明します。

1.モノを動かすこと

物流としての用語でもあるマテハン。マテリアルハンドリングの略で、モノの移動のことを指します。モノという物理的な製品を扱う以上は必ず移動は存在しますが、なぜわざわざ「マテハン」などと呼ぶのでしょうか?

今ここにひとつのボールペンがあります。このボールペンを製造するところを想像してみましょう。その製造においてどれくらいの「マテハン」が存在するでしょうか?

ボールペンの各部品は樹脂・金属・ゴム等の様々な原材料で成形されています。これらの部品がまず生産され、これらの原材料が部品生産工場へ運ばれてくるのも「マテハン」の一つです。さらに、出来上がった部品をボールペンとして組み立てる工場へ輸送します。

組み立てられたボールペンとしての製品は倉庫へ輸送され、その後販売店へ出荷として輸送されます。ざっと見てもこれらの「マテハン」が存在しているのです。更に細かく見ていくと、部品生産の工場内でも加工機械から検査場所へ、検査場所から出荷梱包場所へ工場内を移動しています。これは組立工場の中でも同様です。集まった各部品はそれぞれの必要工程へ工場内を移動していて、実に大量の「マテハン」が存在しているのです。

ここで、『だから何?』と考えるのは、モノつくりの観点からはNGです。モノを動かす(マテリアルをハンドリングする)ということは、この移動作業を誰かが行っているということなのです。「誰か」というのは人間という意味だけではなく、あらゆる移動エネルギーを指します。この移動させる物理的作業には必ずお金(コスト)が必要になるのです。

モノを動かすことはコストを使うことでもあるのです。

2.モノの移動を少なくすることを考えることがマテハンという概念を生む

上記で説明の通り、実は我々が手にする全ての製品の価格に「マテハンコスト」が含まれることとなります。

材料状態の金属や樹脂そのものの価値より、それを加工して形が作られた状態の方が価値は高くなるでしょう。それは、材料の状態より部品としての利用価値を持つことでモノの価値が付加されたからです。これを【付加価値がつく】【付加価値が高くなる】と表現します。

この付加価値の向上とそのための手間賃(コスト)が比例すれば、市場での価格において納得を得ます。しかしながら、移動させるという作業においては「モノ」に与える付加価値が発生しないのです。

移動しただけで「モノ」そのものに変化がなく、したがって価値変化も無いからです。しかしながら、先述でも述べたように「モノの移動にはコストが必要になる」ので、当然最終的な製品コストには含まなければなりません。マテハンコストは製品の付加価値に寄与しないコストなのです。

「マテハン」というコスト認識性をあげるワードを持つことで、生産オペレーションにおいて極力無駄なモノの移動を削減する意識を生じることができ、計画や実行のPDCAサイクルにおいて物理的なモノの移動の改善活動を図ることができます。これが「マテハン」という概念の存在の目的なのです。

マテハン改善が生むメリットは、コストだけではなく物理的移動はモノを破損させる機会発生の要因にもなるでしょう。要するに不良発生要因の一つになります。また、コストと同様に時間を費やします。したがって、ロングリードタイムの要因にもなるでしょう。また、移動する先と移動後のスペースを用意する必要があり空間ロスの要因にもなります。これらの改善効果は、時間・コスト・スペース等の合理化のメリットも生むのです。

何気ないところに大きな価値を創出することが可能な「マテハン」の概念。しっかり認識をしておきたいものです。