製品開発ポイント-作りやすさの大切さ
作業性を良くすることで、作業性を向上させる。この作業性の向上のための生産技術を説明します。
1.作りやすくするための工夫
今、ここに一つの紙があります。この紙で折鶴を折るとしましょう。ここにAさんとBさんの2人の人がいます。それぞれに紙を渡し「よーいスタート!」で同時に鶴を折る作業を開始してもらったとします。さて、この2人のどちらが先に鶴を折るでしょう? この2人の折鶴を折る能力は同じです。
実はこの問いには裏があるのです。
それは、Aさんは立ちながら、Bさんは座って机の上で作業をする違いです。当然、Bさんの方が早く鶴を折る結果になるであろうことは容易に想定されることでしょう。なぜなら、AさんよりBさんの方が、折鶴を折るという作業がしやすいからです。
この作業をしやすくするということを【作業性を向上させる】といい、この作業性の向上のための技術を【生産技術】と呼びます。
生産技術の領域は幅広く、あらゆる製造工程において、その工程の作業性を向上させることが対象となります。作業性の向上がもたらすメリットは大きく「工程品質の安定」と「作業工数の軽減」になります。
先ほどの折鶴の作業で言えば、作業性の悪い状態で折られた折鶴は折るのに時間もかかり、且つ出来上がった形も悪いということになるでしょう。これを作業性を良くすることで時間も短くし綺麗な折鶴が折られるというメリットになります。
2.作業環境が持つ本来の能力を引き出す(製造のお医者さん)
加工といっても、機械を使用して加工する機械加工と、人の手で加工する手加工など加工環境の違いがあります。
機械加工と手加工と加工分けをする考え方もできますが、実は本来全て人が行う予定の作業を機械作業に置き換えたという見方をすると、その工程全体の作業を機械〇%と人〇%で分業をしているのです。機械100%を完全自動化といいます。
ほとんどの製造業界において、このように機械と人のコラボレーションによる加工が行われています。伝統工芸や手工業時代の方法を踏襲する分野においてはこの限りではありませんが、物理的な加工作業に限らず組み立て作業などの手作業の分野でも、機械の作業に置き換える自動化が進んでいます。その後の工程である検査作業や梱包作業においても機械作業化が進んでいるのです。
ある製造工程において、その工程に必要な全ての設備と作業者と作業環境を含めた全てを「その工程における製造インフラストラクチャー」と呼びます。「インフラストラクチャー」とは広義では基盤とか根幹という意味になりますが、この場合は製造のために必要な「資源」という意味になるでしょう。作業場などは「環境資源」、加工機械などは「設備資源」、作業者などは「人的資源」となり、この製造インフラは本来の製造工程における基本能力を持ちます。
加工機械においても作業者においても100%の能力を発揮した際の工程能力を持っています。この製造インフラの持てる能力を極力100%に近づけるように発揮させてあげる技術アプローチこそ【生産技術アプローチ】になるのです。「人」「機械」それぞれにおいての能力を発揮しやすい状態=【作業性が良い状態】を考えることと同時に、その各関係性においても相互が持つ工程能力を補う関係にあるのか? または相殺し合う関係にあるのか? も考慮していく必要もあります。
単純な作業に思える工程も実は様々な要素の関係性で構成されています。それらの持つ特性を分析し、どのように「製造インフラストラクチャー」を活かしていくか、その分析と観測を日々行う仕事といってよいでしょう。
あたかも、どこが悪いのか分からない患者を前に、問診や診断を行い、発見された原因や要素を取り除いたり改善を行うという「治療」を施します。生産技術とは、まるで製造活動におけるお医者さんとしての役目なのです。