製品開発ポイント-製造数量とコストの関係
製造品における材料と加工費用が製造コストの主要素となります。この数量とコストとの関係はどう考えればよいでしょうか?
1.数量を増やせばコストは下がる
製造する際に、用意する素材量を少量で調達するのか、大量に調達するのか。
当然、大量に調達する方が1個当たりのコスト下がることが多くなります。ボリュームディスカウントといい、一般的に大量に購入するものは値引きされます。これは営業の手間が省けるメリットの還元や、物流コストの合理化による利益還元などが理由としてあげられます。つまり、『多く買ってくれるのなら価格を安くしますよ』という概念です。
素材量がそうであるなら、加工においてはどうでしょうか? 少量よりも大量に加工する方がコストは安くなるのでしょうか? この場合も、たいていの場合コストは安くなることが多いでしょう。なぜなら、一定のロス工数を加工数量で割るからです。
加工を行う場合には必ず加工作業の前後に段取り工数というものが発生します。加工作業を行うための準備作業を加工前段取り、加工後の後片付け作業を加工後段取りといい、これはほとんどの加工に存在します。
例えば、ある製品で加工前後に各10時間の段取り工数を要する場合に、単純に1時間2000円の工数単価であるとすると、加工前と加工後には必ず20,000円の段取り工数費用が発生する計算になります。例えば、100個の加工の場合と1000個の加工の場合では、前後工程で計40,000円分の発生する段取り工数費用を、その加工数で割ることになるのです。100個の場合は1個当たり400円になりますが、1000個の場合は1個当たり40円となります。
その他にも、加工の安定性においても、加工調整によるロスタイムにおいても大量生産の方が1個当たりのコストとしては安くなるでしょう。したがって、製造数量を増やすことは当該製品の単価を安くすることにつながります。
2.数量を増やしたのにコストが下がらない??
しかしながら、先述のように製造数量や発注数量を増やしたのに、見積もり単価が下がらない場合もあります。なぜ、そんなことが起こるのでしょうか?
例えば、ある布生地がありその布生地を材料にシャツを製作するとします。その布生地の2ⅿ×1ⅿの生地でシャツ2枚が作れるとします。この材料である布生地が2ⅿ幅で100ⅿ分を発注単位として購入することが条件の場合、1回の生地調達で200枚のシャツが製作可能ということになります。このシャツは200個で単価2,000円だとします。
ここでシャツを300個発注することにしましょう。この時、布生地は計400個分を調達しなければならないこととなります。シャツ100個分の余分な布生地のコストを300個分にプラスしなければならないため、結果的に200個より300個の方が1個当たりのコストが高くなってしまうことになるのです。このようなケースは、電線や紐、テープや紙といった材料でも起きやすい事象です。
必ずしも、数量を増やすことが低コストにつながるとは限らないことも理解しておきましょう。